川崎学園 創立50周年記念誌
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Ⅴ このさきも187■ これからも変わらず一生懸命に 私の仕事は創設の志を次に引き継ぐことだと思って、これまで仕事をしてきました。50周年は、その一つの節目でもあるととらえております。創設者川﨑祐宣は、「良き医師」を養成しようと、この倉敷の地に医科大学をつくりました。戦前に岡山で小さな外科病院として出発して以来、「医師は患者のためにある。医師のために患者がいるのではない」と、患者のための医療を唱え続けてきました。その信念から、真に人間的に優れた医師を養成する大学をつくろうという思いに結びついたのです。 「人ひ間とをつくる 体をつくる 医学をきわめる」、この建学の理念に流れているものは、そうした創設者の思いです。学園の一員となってくれた職員や学生一人一人の心にも、この「思い」が共有されております。 50周年のスローガンである「かわらぬ思い、このさきも」。これは本当によいスローガンと思っております。 「かわらぬ思い」、それは、患者さんを診させていただくという気持ち、お断りをしない救急医療。この「患者さんのための医療」が我々の原点です。そして、“同じ職場で働く仲間を思いやる気持ちを持つ”、この思いをこれからもぶれずにつなぎ、その中から新たな発展を目指しつつ、同じ思いの医療人、医療福祉人を育てていくのが、これからの川崎学園の目指す方向だと思っております。 世の中が変わっていく中で、病院や医療、医療福祉の人材育成に求められるものは色々と変わってきつつあります。社会や地域の人たちが求めるものに対して、それをどういう形で提供していくのか、人を育てていくのかということを常に考えながら、とにかく一生懸命実行してまいります。 川崎学園は、学園のルーツとして重要な地である岡山市中心部を、学園創立50周年という機会に「岡山キャンパス」として整備し、より一層充実・発展させていきたいと思っております。 「岡山キャンパス」は、三つの主な施設で構成されます。 一つ目の施設が、「川崎医科大学総合医療センター」です。開院からすでに3年半が経過し、地域医療支援病院として皆様から信頼をいただき、その役割を果たしていっていると思っております。 二つ目の施設として、岡山市中山下の旧川崎病院跡地に「川崎医科大学高齢者医療センター」という新しい病院を計画しております。超高齢社会を迎えた今日、医療の場は急性期医療とともに地域の中での在宅療養の充実が求められております。 これまでの大学における医療人養成の課程では、急性期医療が中心で、亜急性期や回復期、さらには在宅療養における医療、医療福祉についての教育、実習、研修が十分とは言えませんでした。急性期の最先端の医療が終わると回復期を経て、在宅療養へと移行します。患者さんが安心して在宅療養へ移行できるよう、そして医療や介護を受けながら住み慣れた場所で療養生活が送れるよう、支援していきたいと考えております。 また、高齢者は、数多くの疾患を抱えています。その診療を総合的に全人的に行うため、高齢者総合診療医を育てていきたいと思っております。高齢者特有の疾患や症状に対応するため、高齢者医療センターには、認知症やもの忘れ、運動機能の低下に対応する部門や、栄養指導等により健康長寿を推進する部門などを設置し、高齢者が在宅でQOLを損なわず、健康に暮らせることを支援し、それを涵養していきたいと考えております。■ 学園のルーツ岡山市中心部を 「岡山キャンパス」に 三つ目の施設として、「川崎医療短期大学新校舎棟」の建設を計画しております。看護科と医療介護福祉科の学生が、総合医療センター、高齢者医療センターという特色が異なる二つの病院と近接した場所で知識を深め、実習を行っていきます。 「岡山キャンパス」では、医療短期大学の学生だけでなく学園各施設の学生・教職員等においても、地域医療や高齢者医療についての学びの機会や研修の場を設け、急性期から在宅療養支援まで幅広い分野において地域で活躍できる人材を育成していきたいと思っております。 超高齢社会となった今、医療そのもののあり方も根本からの見直しが迫られています。これからの医療、医療福祉に対応した人材、地域において求められる人材を育成することは、学園の使命だと思っております。「岡山キャンパス」を整備する岡山市中心部

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