川崎学園 創立50周年記念誌
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 「大学は学生のためにある」「病院は患者のためにある」の原点をもとに、建学理念の柱の一つ「人ひ間とをつくる」をより充実させるため、学生寮の充実を図った。 寮は勉学に励む環境が整うだけでなく、寮生活を通して協調性や他人を思いやる気持ちが育まれるため、将来の良き医療人、医療福祉人を目指す場となる、川崎学園が発足当時から大切に考えてきた施設だ。誠治は、附属高校および医科大学の男子寮・女子寮の新築や増改修、医療短期大学キャンパス内に新女子学生寮(このはな寮)の建設などの寮整備に取り組んだ。また「体をつくる」場として、川崎学園総合グラウンドやテニスコートの整備、川崎学園総合体育館のリニューアル工事などを精力的に行った。 多くの事業整備に取り組んでいる誠治だが、その理事長時代を特徴づける事業の一つに、川崎医科大学総合医療 理事長就任直後の2012(平成24)年6月、誠治は医療福祉大学の「学長代行」も併任した。椿原彰夫新学長が就任するまでのわずか6か月間だったが、さまざまな画期的な取り組みを意欲的に行った。 まず、創設者川﨑祐宣がわが国で初めて唱えた“医療福祉”の原点に戻り、あらためてその意義と意味を確認するため、2012(平成24)年に川崎医療福祉学会において発足した「医療福祉を考える」プロジェクトで、医療福祉の定義を「人間尊厳の確立を究極の目的とし、医学・社会・文化の統合的視点から人を理解し、健康・安心・自立のために実践すること」と定めた。 そして、医療福祉大学として育成すべき人材を明確にし、その実現のための教育体制強化に取り組んだ。2013(平成25)年には一人の人間としての確固たる基盤づくりを行う組織として、総合教育センターを立ち上げた。初年次教育を見直し、医療福祉人として必要な専門知識や技術の基盤となる医学教育の徹底や、国際感覚を養うための英語の必修化など、次々と方針を打ち出し、形にしていった。 また誠治は、医療福祉大学だけではなく、学園の学生一人一人が医療福祉の心を根底に持つことが重要であると考え、従来各施設で行われてきた行事を合同で行うなどの医療福祉の原点に戻れ施設整備の充実取り組みも始めた。まず学園の約1,500人の全新入学生を対象に、医療福祉の原点について学び、将来の多職種連携につながる学生同士のコミュニケーションを図るための「川崎学園入学時合同研修」を2015(平成27)年から開始した。翌年には、学園一体となった入試改革を行うため、施設横断的な組織として「川崎学園アドミッションセンター」を立ち上げ、受験のさまざまな選択肢提供のため、医療福祉大学、医療短期大学、リハビリテーション学院による3校合同入試や合同のオープンキャンパスを取り入れた。医療福祉大学の入試では、すべての入試区分に面接を取り入れることとした。 教育体制をより充実・発展させるため、医療福祉大学は、2019(平成31)年に医療短期大学からのさらなる改組を行い、その歴史と実績を引き継ぎ、3学部15学科から5学部17学科へと大きく改変した。また、医療福祉大学には、「看護実践・キャリアサポートセンター」を設置し、看護師の特定行為研修など、生涯教育にも力を注いでいる。 これらの取り組みにより、誠治は良き医療福祉人を育成するための基盤をさらに盤石なものにし、新しい医療福祉大学および学園全体の方向性を決定づけた。センターの開院がある。総合医療センターは、学生の臨地実習の場の充実のため、また地域住民のニーズに応えるため、2016(平成28)年に開院。誠治は初代病院長として、病院の移転、立ち上げに際し陣頭指揮を行った。 総合医療センターは、地域医療支援病院として「救急医療」「高度専門医療」「リハビリテーション」を三つの柱に、附属病院と同様、患者中心の質の高い医療を提供している。 質の高い幼児期の教育と保育により地域貢献を目指し2018(平成30)年に開園した「かわさきこども園」も、注目を集めた。32学園の原点を学ぶ新入学生たち(川崎学園入学時合同研修)GTC学長らとかわさきこども園を訪問

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