川崎学園 創立50周年記念誌
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医科大学「教育のあゆみ」全寮制  川崎医科大学開学以来の大きな特徴の一つに「全寮制」がある。 創設者川﨑祐宣は、自身が第七高等学校造士館時代に経験した寮生活の素晴らしさを、是非学生たちにも体験してほしい、そして人間性、友情、協調性、学力を培うには寮生活が不可欠との強い信念で取り入れた。開学当初から、単なる生活のための場所ではなく、将来「良医」となるにふさわしい人格を形成していく「教育寮」として位置付けられていた。そのため舎監長には医科大学の教授が就任。副舎監長には教員を配置し、厳選された舎監・寮母も常駐するなど、大学を挙げて手厚く細やかな配慮が施されている。川﨑祐宣もしばしば寮を訪れ、学生たちと語らい交歓し、食事を共にするなど、寮をとても大切にしていた。1996年度からは、1・2学年の2年間から1学年のみの期間となったが、「良医」育成の要となる寮の精神は、今も脈々と受け継がれている。担任制と保護者会  教員による担任制も創設期から本学を象徴する教育システムの一つだ。担任制は、学年担当、小グループ担当、地域枠担当の3つの形式で行われている。 学年担当教員は、春の面談で担当学年の学生全員のひととなりや、また出欠席状況等の生活の様子と、それぞれの学生の成績も把握。そして成績不振等、課題のある学生には進級のための問題点と原因を探り、さらなる面談や声掛けのフォローを行う。小グループは異なる学年の学生から構成され、担当教員は、学修の助言、生活指導、個人的なケアを行う。成績は、本学用に開発された成績表示システム(alagin K1)により多彩な指標が得られ、また、学生・保護者と共有できるので、より細やかなアドバイスが可能になっている。地域枠入学者には、大学の役職者が担当となり、地域医療ゼミの特別講義を受講したり、同じ志を持つ学生同士が親睦を深めている。 本学での「良医」育成には、学生・大学・保護者の三位一体となった取り組みが不可欠と考え、開学時に「保護者会」を結成。本学で行われる「総会」と各地区に学長・副学長等が出向いて行う「地方保護者会」を開催し、医学教育の現状と本学の教育方針を伝えている。本学ならではのこの取り組みは、現在まで継続して行っている。小グループ懇親会で挨拶する川﨑祐宣理事長(当時)人ひ間とをつくる教育 私は、世に喜ばれ役立つ、真の医師、いわゆる良医を育てる目標を次の三つにしぼり、それを建学の精神として、特色ある大学をつくることに努めました。 その第一は、先ず人ひ間とをつくること、第二は、からだをつくること、第三は、医学をきわめることです。具体的に申しますと、患者を人間として尊び、その立場を理解し同情し、その診療に全力をつくす。患者と、苦しみ喜びを共にし、金銭も名誉も思わぬような高こう邁まい純粋な人をつくること。患者に対する悠揚迫らぬ態度と微笑、重症患者の診療や、医学研究などに徹夜の連続にも堪え抜く、力強い体力と精神力を養うこと。また、人間の生命に対応する医学の厳しさを知り、一歩一歩と基礎を踏みしめ、自ら問題を生み出し、究明し、応用するような科学的態度を身につけ、生涯研究、生涯教育の素地をつくることです。 〜中略〜 自らのからだを解剖に付すことにより、良医を育てる目標に御協力下された方々、また、協力されようとする方々に、私はあらためて深く敬意と感謝をささげます。   川崎学園理事長   川祐宣 ―「くすのき」の創刊にあたって― 篤志献体者の会 くすのき会会報創刊号より(昭和53年5月27日発行)開学当時の男子寮(生坂)48「ふるさとの森」での小グループ懇親会(木々がまだ若く、野原のような光景の頃)

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