川崎医科大学附属病院正面玄関前の庭園には、一対の木が植えられています。この木はヒポクラテスの木(プラタナス)といい、和名を鈴懸(すずかけ)といいます。春には豊かな緑の中に淡黄緑色の可憐な花を、そして冬には落葉し、文字どおり枝の先に鈴を掛けたようにぶら下がった姿が見られます。
このヒポクラテスの木は、遥かエーゲ海に浮かぶコス島から運ばれた種子を日本で苗木に育て、当地に移植したものです。その原木は、ギリシャ医学の祖ヒポクラテスの故郷コス島の町の広場にあります。遠く紀元前の昔、医聖ヒポクラテスはこの原木の木陰で、弟子たちに医学・医術や医の精神を説いたとされています。そのことから、いつしかプラタナスを“ヒポクラテスの木”と呼ぶようになりました。
このヒポクラテスの木が本学園内に移植されたきっかけは、学園創設者川﨑祐宣が「ヒポクラテスの会」会長に苗木の移植を希望し、日本赤十字社中央病院(現日本赤十字社医療センター)で育てられていたものを移植したことが始まりです。しかし、1回目、2回目の移植時にはうまく根付かず、枯れてしまった経緯がありましたが、3回目の移植でやっと倉敷の地に根をおろすこととなりました。今では大きく育ち、諸施設に学ぶ学生をはじめ学園に集う多くの人々を温かい慈愛の眼差しで見守っています。